野の春
本の話題になることが度々ある。
経営者仲間は本が好きだし。
そして
「どの作者の、どの本が一番好きですか」
そんな話しになる。
すると待ってましたとばかりに
身を乗り出して話す自分がいる。
そりゃ、本が相当好きだから。
21歳の頃にふとしたきっかけで本が好きになり
それ以来膨大な時間を本と共に過ごしてきた。
本を読んでいることを褒められることがあるけど
ただただ好きで読んでいるだけなので
ちょっと返事に困る。
好きなことが習慣になると
努力を努力とは思わなくなるから
何かを取得するなら最強だと思う。
例えば英語をマスターするには
2760時間が必要だと
専門家がインタビューで答えていた。
ほとんどの人が中学高校で800時間習っているから
あと2000時間だ。
ちなみに週一回の英会話教室だと
46年ほど通わなければならない(笑)
「だからさ、本を読むみたいに
英語の勉強を習慣化すればいいんだよ〜」
と、わかっちゃいるけど
まったく習慣化ができない・・・。
それはともかく
長らく本を読み続けてきた中で
思い出深い一冊を上げろと言われたら
この小説しかない。
僕が一番好きな作家である
宮本輝の代表作がこれだ。
今から37年前に第一部が世に出た。
そして長い長い年月を経て
最終巻が本屋さんに並んだのだ。
「とうとう終わってしまったんだな」
残りのページをいとおしみながら
ゆっくりと読み切った。
「人間の幸福とは何か。
僕が小説家として伝えられるのは、それだけです」
と、宮本輝はエッセイで書いている。
僕は29歳で出会って
それからすべての新刊を読み
特に好きな小説は何度も読み返してきた。
それで何かを取得したかどうかはわからない。
でもきっと、目に見えない大切な何かを得たのだと
最終巻を読んで思った。
若い本好きは
きっと宮本輝を読んだことがないと思う。
「これから読めるなんて、幸せだね。
もう文庫本になってるし」
僕も「流転の海」を
第一部から読み返そう。
きっと若い頃にはわからなかったことや
新しい幸福に出会えると思う。