空の拳〜黄金のバンタムを破った男

空の拳
一冊目はなんと
女流作家が書いたボクシング小説だ。
弁当箱のように分厚いが
中身も半端じゃない。
「どうして女性に、男の戦いがここまで書けるんだ」
と、思ってしまうのは偏見だろう。
角田光代さんという第一級の小説家は
大手出版社に勤め、ボクシング雑誌の担当になった主人公「空也」を通して
現在のボクシングをリアルに書いていく。
あるボクサーが世界チャンピオンへの階段を
登って行く道を書くのではなく
普通のボクサーをの姿を。
試合のシーンは息苦しくなるほどだ。
もう一冊は大好きな小説家
百田尚樹が昭和の偉大なボクサー
ファイティング原田を題材にしたノンフィクション。

「黄金のバンタム」を破った男 (PHP文芸文庫)
僕は小学生の頃から
スポーツ観戦オタクなので
当時の世界タイトルマッチはテレビですべて見ている、と思う。
ガッツ石松に始まり
具志堅用高のタイトル奪取から13度防衛する時代だ。
この本は、もう一昔前
1960年代の話し。
当時の世界チャンピオンは世界でたった8人。
現在の世界チャンピオンは70人。
「えっ、なんで?」
ボクシングを知らない人なら
ものすごく不思議だろう。
説明はしないけど(うまく書けないし)
当時の世界チャンピオンの価値が今とは比較にならないことは
わかるでしょ。
ファイティング原田はなんと
その時代に二階級を制しているのだ!
あえて比較するとイチローよりも香川よりも
間違いなく上だ。
その人気も半端じゃなく
タイトルマッチのテレビ視聴率はすべて50%越えだ。
(年間で紅白の次だったのです)
ボクシングの話ではあるが
これを読むと高度成長期の日本の姿が浮かび上がってくる。
最後、原田の引退シーンは涙なくして読めない。
「よくやった、原田」
まったく門外漢の僕でも本人に言いたくなる。
これだけ熱気溢れるノンフィクションだから
普通は「俺もボクサーになりたかったナ」と思うはず。
それでも
「若い時、ボクシングに出会いたかった」
とは、全く思わない。
その理由は読めばわかると思う。
男性にも女性にもおススメの二冊です。